特別対談 鶴田一郎氏
「自分」を発見するとは描き続けること 鶴田一郎


2023.2.16 福岡三越4階 岩田屋三越美術画廊
interviewer CODD 西山恭平
(西山)この度、CODDでは九州産業大学芸術学部とのコラボレーション企画として、芸術学部のみなさんに「HASHIRA」という家具にアートの息を入れていただいております。
鶴田先生は、昨年まで九州産業大学で客員教授を務められていました。
そこで、アートで活躍していくことを目指す彼らに対し、改めて先生からのメッセージを届けたいと思っています。よろしくお願いします。
(鶴田)私は、大学の時から人一倍描くことに時間を費やしてきました。
描くことに対して「人に負けない!」と言い切れるほど、描いて描いてを繰り返してきました。どんな分野でもそうですが、学生時期に大事なことは『自分自身から何が出てくるか』を4年間の間に見つけ出すことだと思います。
ことアートにおいては、一生懸命に描いて描いて、それからやっと出てくるものが『自分』と呼べるものになるのではないでしょうか。
(西山)描きながら自分を見つめ直すことや、自分が何者なのかを、手を動かしながら考えることが大切ということですね。
(鶴田)そうですね。作品を創り出すこととは、描いてみて、描き終えたら顧みる。手を動かさず「考える」ことだけしたとしても、月日のわりには自信をもって創り出したいものがはっきりしないものです。
僕がよく思うのは、想像も大事ですが「たくさん描くこと」。
描き進めることで、クリエイティブというその場その場の偶然を発見する。例えば、ここで偶然選んだ色を使うことで、その次に進むにはまた偶然の色が重なっていく。その偶然の連続みたいなことは確率的にはものすごい倍率になりますが、何百万分の一ぐらいの方向の「自分」を突き詰めていくこと。
その「本当の自分」を見つけ出すために手を動かし、実際に描いてみるということでしか、得られるものはないと思うのです。
(西山)ありがとうございます。今、お話から私が感じたのは、アートもビジネスも多くの人に興味を持っていただくには、創り出したものがどれだけ尖がっているか?という点だと思いますが、いかがでしょうか?
(鶴田)尖る=「自分のデザイン」を考えると、自分の情熱に任せていくのも大事なことだと思います。
しかしデザイナーとしては、きちんと自身の作品を俯瞰して、方向性がどこに向かい、それが正しいのか、軌道修正は必要なのかと判断できる「冷めた自分」もいないと商売にはなりません。尖ることの追求と売り物にすることの両立は難しいなと感じることもあります。
(西山)情報社会が発展する中で、これからの学生さんは自分自身やクリエイティブを外に発信していくやり方も大切になっていくと思います。その点も、先ほどの「俯瞰して見れる」ようになると、活躍の場が拡がるように思います。
(鶴田) そうですね。作品の創造だけでなく演出も含めて大学4年間の勉強だと思いますので、まずは一生懸命描くこと。なおかつ、もうきちんとした文章や周囲の人への対応をできるような人間力としての感覚を養うことも大切だと思います。
(西山)貴重なお話しありがとうございました。
Profile
鶴田 一郎
パリやニューヨークなどグローバルに活躍される人気の現代画家。
1987年から11年間、ノエビア化粧品のテレビCMに起用され一世を風靡した。
アールデコ様式の作風で知られる美人画をはじめ、唯一無二の線を探し求めた「鶴田一郎様式琳派」シリーズや、「鶴田一郎様式」と名付けられた仏画など、国内外で高い評価を得ている。
1954 熊本県天草市出身
1972 熊本県立天草高校出身
1976 多摩美術大学 グラフィックデザイン科卒業
1987 ノエビア化粧品の広告に使用される(〜1997)
以降、日本国内やパリでの個展、ニューヨークアートエキスポに出展など
<参考>
作家活動の集大成のスタートとそいて福岡から京都に移り住み、絵を描く事、美を創造する事、理想の世界を表現する事、そして一筆一筆想いを乗せて色を重ねてゆく事、その行為は祈りだと思い、描き続けている。
(参照:https://ichiro-t-works.com/information/2023-01-18.html)
唯一無二の線を捜し求める。あたかもそれは最初から定められてでもいたかのような、徴塵の迷いも感じさせない鋭さと、美とを定着させる力とを持った絶対なる線を。幾度となく描いては消し、その繰返しの中からやがて求める線が朧気に見えてくる。しかし限りなく近づいたと思えたその一瞬の後には、その線は突然ゆらぎ始め、曖昧なる迷宮の彼方へと消え去ってしまう。そのゆらぎの迷宮の中へは、いくら踠こうとも、私の力はもう遠く及ばない。再びその真実の線を発見するには、何か私自身以外の力が必要となってくる。その何物かの力を借り、身を委ねるしか、真実の線を手に入れる方法はないのである
(参照:https://ichiro-t-works.com/)
<作品・活動に関する問い合わせ先>
公式アートストア
https://www.tsuruta-bijinga.com/
株式会社 鶴田一郎事務所
https://ichiro-t-works.com/
本社所在地:〒600-8325 京都市下京区西側町483番地 2階
TEL:075-353-5355 FAX :075-353-5357