
NPO法人 森林をつくろう
佐賀県のNPO法人[森林をつくろう]の代表理事 佐藤和歌子さんにお話を伺いました。
私が代表を務めるNPO法人森林をつくろうは、山村で生計を立てる者、林業・木材業に携わるものが中心となって、2004年に設立しました。環境保全の一つとして、森林の保全が叫ばれる中、森林や林業についてもっと正確な情報発信をする団体として機能したいと考えたからです。
私自身、佐賀県東部に位置する脊振という山村で、素材生産業を営む家庭に生まれ育ちました。素材生産業とは木材業の一つで、長年木を手塩にかけて育てる森林所有者(林家)から立木を購入して伐採、搬出する仕事です。家業ではこれに加え、植林や下草刈りなどの育林作業まで行っています。
幼い頃は、家族旅行と称して山の調査に出かけたり、お世話になっている森林所有者のところへついて行ったりすることも多くありました。所有者の皆さんが、私たちを自分の子孫のように可愛がってくださり、所有する山の話を元気に話してくださっていたことを思い出します。
それからわずか30年余り。いつの間にか所有者は山(木)を育てる意欲を失い、次世代へ引き継ぐことを戸惑う状況を呈しています。木材価格の低迷や所有者の後継者不足について聞いたことがある方は多くおられると思います。
木の成長には長い時間を要しますが、その間様々な過程が存在し、そのほとんどに人手を必要とします。所有者は植林してから50年以上先の、自分では見ることが叶わない木の成長を想い、子孫の役に立てたら、喜んで使ってくれる人のものへこの木が手渡されたらという願いを込めて、山の手入れに向かいます。2世代、長い場合は3世代・4世代にもわたり育てられる木は、多くの人の愛情や希望を感じながら、上へ上へと向かって成長しているはずです。このように感動さえ覚える人と木の関係ですが、50年育った杉の木が1本わずか1,000円ほどにしかならないというのが現状です。
高度経済成長以降、私たちの生活は豊かで便利になるとともに、以前は木材を活用していた暮らしの道具が、次々と工業製品へ姿を変え、生活の場で木をみる環境が少なくなってしまいました。ところが、今でも多くの人が、疲れを癒しに行く場所も、癒しを感じる空間にも、必ずと言っていいほど森林や山、そして木材が存在します。
このように、森林(山)は本来、様々な動植物が集い、おいしい空気と水を生み出す、魅力あふれる場所だと思います。その魅力ある場所を管理し、緑豊かな環境を作り出してくれる人がいること、どんな環境でも上へ上へと成長し、喜んで使ってくれる誰かをきっと待っていることを想像して、暮らしのほんの一部に「木を使う」人が一人でも増えていくこと、日本の森林や林業、そして木材の特性を理解してくださる専門の方が一人でも増えていくことを願っています。
特定非営利活動法人(NPO法人)森林をつくろう
理事長 佐藤 和歌子
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